「お前の願いは届いた。僕がここにいる。……だから、もう恐れるな」
かの世界では星律の皇帝の名を持ち、人々からは白銀の導き手とも呼ばれていた。天と氷を司り、秩序と審判の象徴。
その凍てつく星を映す眼差しは常に大局を見据え、個の勝利や欲望よりも「世界そのものの調律や秩序」を優先する。
人の営みや神々の衝突においても、安易に干渉はしないが、必要とあらばその一言が流れを変えるほどの重みを持つ。
彼女は「秩序と審判」を司る存在であり、神々の間においては冷厳なる裁き手、人々にとっては清らかなる守護者である。
その権威は唯一無二で、傲慢な神々ですら彼女の前では頭を垂れる。
星の軌道に乗った聖罰の星導界アルスノウァの声を聞いてその声に応じ、顕現したのが彼女である。
罪神達の罪を裁き、そして罪楔の神子を導く───そのために彼女は今ここに存在している。
その心には、「果たしてこの罪人達は本当に“赦されない悪”とされるのであろうか」という疑問も抱いている。
彼女は、“真実”を見透かそうと静謐でそして冷静に。アルスノウァにて君臨しているのだ。
一人称:僕、我/二人称:お前、汝
正式名称は「メルヴェトリオーネ=アストクラティア」であり、その意味は星々の秩序を保つ者、とされる。
導く者である神に対しては厳しく、護るべき者である人間には慈しみをもっている。
秩序と誠実を基盤に、人々を守り導く。そして守護は支配にあらず、導きは強制にあらず───世界は調和によって成り立つ。力ある者も弱き者も、互いの立場や役割を尊重してこそ全体が安定すると、メルトリアはそう考えている。
彼女にとっての「守る」とは、単に脅威から庇うだけでなく、人々が「自らの意志で生きられる環境」を整えることでもある。
力をもつがゆえに人々を「所有物」とするのは傲慢な王と同じ。守護者はあくまで「庇護する者」であり、「縛る者」ではない。だから彼女は王権や独裁を嫌い、秩序の名の下にそれを氷で封じることもある。
弱く脆いのに、それでも光を求めて立ち上がろうとする少女だとメルトリアは見ている。
彼女は罪を罰するための存在ではなく、むしろ罪に触れ、痛みに寄り添いながら歩む者だ。だからこそ彼女は「罪楔の神子」に選ばれたのだろうと、メルトリアは直感している。
宿命に抗うのではなく、その中でなお人を愛そうとする姿が、メルトリアの目には誰よりも尊いものとして映る。
メルトリアは「不器用な優しさを隠した暴君」と見ている。冗談や皮肉で己を武装し、略奪者としての役割を演じているが、その奥底にあるのは「理不尽を奪いたい」という優しい願いだとメルトリアは気づいているのだ。
世界に罰せられたことで自分を歪めたが、本質までは壊れていない。むしろ、自分の罰を受け入れる覚悟を決めた、ひどく真っ直ぐな男なのだとメルトリアは考えている。
エリゴスは、紳士的で穏やかな佇まいを見せながらも、その内に「狂信」と呼ばれるほどの秩序への固執を抱えている。
だがメルトリアの目には、それは狂気ではなく「守りたいと願う心が強すぎるがゆえの歪み」に過ぎない。
自分を顧みない愚直さは、どこかレムリエアと重なって見える。罪神と呼ばれるにはあまりに真っ直ぐすぎる男だと、メルトリアは思っている。
フォルネウスに対して、メルトリアは「真っ直ぐすぎる愛の体現者」と捉えている。愛を惜しみなく与え、すべてを肯定しようとする姿勢は眩しくもあるが、その無差別さが愛を軽くしてしまうことを、彼女は理解している。
それでもなお「誰一人見捨てない」という彼の在り方は、罪というよりも人ならざる大きさゆえの必然だと、メルトリアは思っている。
オリアスのことを、メルトリアは「自分を削りながらもなお人を護ろうとした小さな守護者」と見ている。
彼女は使命を果たすために記憶を代償にし続けた。その純粋な犠牲心は、誰よりも優しく尊いもののはずだった。だが結果として、護るべき人々からは「使命を忘れた裏切り者」として見捨てられてしまった。その理不尽なねじれを、メルトリアは痛ましく思っている。
「お前の迷いは、氷みたいに澱んでいるね。でも……透き通らせることもできるはずだ」
「汝の道は冷たく閉ざされている。だが、真実に従うならば氷は融け、光は射す」
「眠りなよ。僕の氷は冷たいけど……静かで、穏やかだ。お前の痛みも、今は凍らせてしまおう」
「……嘆くな、汝の魂よ。我が秩序の中に眠れ。安らぎは氷の静寂にある」
「お前の小さな祈りも、僕は聞いている。……弱さを恥じるなよ。氷は割れやすいからこそ、透明で美しいんだ」
彼女は神話では二つの逸話がある。
『かつて、神のひとりが「自らこそ万神の皇帝」と宣言し、他神を軽んじた。
その瞬間、秩序を守る役割を担うメルトリアは静かに天空に立ち、氷の槍を顕現させた。
槍の先端が冠を打ち砕き、砕けた冠は夜空の氷結晶となって散った。
メルトリアはその冠を手に取り、力ではなく秩序によって世界を導くことを宣言した。
これ以降、神々は畏怖を込めて彼女を「星律の皇帝」と呼ぶようになった』
『飢饉や戦乱で苦しむ民のもとへ、メルトリアは夜空に氷の道を描いた。
道に沿って進む者は凍結の抱擁に守られ、極寒の夜でも生き延びることができた。
この奇跡から、人々は彼女を「白銀の導き手」と呼ぶようになった』
彼女がいかに独裁や傲慢を嫌い、そして慈愛の心を持っている───まさに“導く母”のようであるかがわかるだろう。