「こういう時こそ落ち着いて。感情的になっては見えるものも見えないからね」
祓魔軍参謀を務める若き軍師で、大佐の階級を持つ。魔浄師団に所属している。
28歳という若さで要職に就いたのは、その卓越した知略の賜物である。
幼い頃から頭脳明晰で、戦術や策を編み出す才能に優れていた。
戦闘力そのものは十分だが、前線の精鋭達と比べると見劣りするため煙たがる者もいる。
穏やかで人当たりが良く、仲間からの信頼も厚い。弟に対しても優しく、時に過保護なほど気を配る。
ただしその裏には重く深い独占欲が潜み、心の奥では弟を手放すことを恐れているようだ。
酒には滅法強く、軍の宴では場を和ませる役割を果たすことが多い。
また几帳面な性格から、日記を欠かさず書き続ける習慣がある。
そこには戦況の記録だけでなく、心情や弟への思いも記されているという。
人柄が温厚なため彼を良く思う人は多いが、彼の「本当の独占欲や執着心」を知る者はほぼいない、とも言えるだろう。
一人称:僕/二人称:君、名前呼び捨て
冷静さは最大の武器であり、混乱の中こそ落ち着きと穏やかさを失わない。
几帳面さは秩序を生み、戦術の基盤となる。
戦において名誉や功績よりも、人の命を優先する。故に無茶な作戦は好まない。
弟にだけは神聖視を許さず、普通の人間として生きさせたい───その思いは兄としての優しさであり、独占欲の裏返しでもある。
仲間には常に冷静であることを求め、言葉で心を安定させることもある。
日記を記すことは心を整える儀式であり、真実を残す手段とも考えている。単に文章を読むことや書くことが好きなのも。
秩序と冷静さ、そして弟への想いが、彼のすべてを支えている。
弟である裡月に対しては家族以上の愛情を幼い頃から持っている。最初は純粋な愛、なはずだった。
自分を追いかける裡月にはほんの少しだけ気付きながらも完全に遠ざけないのは、やはり彼に対しての様々な想いがあるからであろう。
裡月の幼い頃を知っているのは軍の中では自分だけだと、心の奥底では優越感に浸っていることもあるようだ。
「命を第一とする采配」を掲げる皐月の姿勢に、強い共感を覚えている。
一方で、理想が過ぎれば軍全体が危険にさらされるのではないかと、冷静に懸念も抱いている。
誰に対しても敬意を崩さぬ姿勢を見て、「指揮官として理想的な人物だ」と感じている。
弟を「普通の人間」でいさせようとする自分と同じく、皐月もまた兵士を「ただの人」として尊重しているところに、深い信頼を寄せている。
しかしその穏やかさが裏返って、危険な場面で迷いを生むのではないかと、参謀としては心配する部分もある。
緻密で計算高い天音を、梓月は「戦術眼のよき理解者」として信頼している。
自分と同じく冷静さを持つ人物として親近感を覚える一方、天音の合理性が「利用できるものは利用する」という徹底ぶりに、少しの怖さも感じている。
また、自己犠牲を厭わぬ姿勢に「理知と覚悟を併せ持つ稀有な人物」と認めつつも、「無茶をしないでほしい」とどこかで心配を抱いている。
市香の想いには気が付いており、やんわりと市香のことを拒むこともあるがそれでも諦めない市香には「一途な子だ」と嫌な思いはしていない様子。
同時に、市香のためにもハッキリと断ってやれねばならない、とそのタイミングを伺っている、ようだ。
「勝つことよりも、生き残ることの方が価値がある。功績は命あってこそだよ」
「裡月だけは、軍神の偶像になってほしくない。ただ、人として笑っていてくれればい、それだけなんだ」
「焦りは最悪の毒だよ。心を乱せば目の前の真実すら見失う。だから僕は、どんな危機でも冷静であろうとするんだ」
「功績や栄誉なんてものは、時と共に忘れ去られる。けれど、失った命は二度と戻らない。その違いを、僕たちは決して見誤ってはいけない」
「僕の作戦は確かに地味で退屈かもしれない。けれど、誰も欠けさせないためには、それが一番正しい道だと信じているんだ」
幼い頃、梓月は一冊の本に出会った。
それは古くを生き抜いた古の人物の記録だった。
感情に流されず、出来事を文字に残すことで真実が伝わっていく。
その言葉に、幼い彼の心は強く打たれた。
以後、彼は「書き残すこと」に価値を見出すようになった。
日記はただの記録ではなく、自分の心を整えるための拠り所となった。
同時に、本の中で繰り返し説かれていた「冷静さこそが生を繋ぐ力」という思想も深く刻まれる。
激情は人を盲目にし、冷静は未来を切り開く。
だから彼は、どんな状況でも筆を取り、心を文字に刻み続ける。
そして戦場では、誰よりも冷静であろうと自らを律し続けるのだった。